特長と用途
リダイレクト版は、利用者側サービス(IdP)からPKaaSの認証画面へユーザーを遷移させ、FIDO登録または認証を実施する利用方法です。
最終的なログイン成立や後続処理はIdP側が担います。PKaaSは、FIDO登録または認証の実行と、その結果の返却を担当します。
API版とは異なり、開発者側でWebAuthnのJavaScript実装やFIDO用APIエンドポイントを用意しなくても導入しやすい構成です。
認証結果はURLのquery parameterではなく、POST body(form_post)で返却します。これにより、認証結果がURLやブラウザ履歴、アクセスログ等に露出することを避けます。
リダイレクト版は、現時点では弊社と関連のある開発者の方へ限定的な提供を行います。
概要図
想定ユースケース
リダイレクト版は、主に以下のようなケースを想定しています。
- FIDO/WebAuthn のフロントエンド実装負荷を抑えて導入したい場合
- 認証画面をPKaaS側へ委譲したい場合
- まずは限定的な利用者・環境で検証を開始したい場合
一方で、認証画面やWebAuthn実装を自前で柔軟に制御したい場合はAPI版の利用を推奨します。
リダイレクト版リファレンス
処理フロー
- IdP が FIDO 登録または認証を開始します。登録時は、事前に IdP 側で既存認証または本人確認を行ってください。認証時は、IdP 側で事前認証を行わない構成も可能です。その場合、
authnCtxは空文字列("authnCtx":"")としてid_token(A)に設定してください。 - IdP は
stateを生成・保持したうえで、id_token(A)、src、pur、stateを HTML form 等により POST して PKaaS へ遷移させます。登録時は、既存認証または本人確認の成功後にid_token(A)を発行してください。 - PKaaS は
id_token(A)を検証し、FIDO 登録または認証を実施します。 - PKaaS は認証結果を含む HTML form を返します。ブラウザ上で auto-submit し、
srcで指定された戻り先へid_token(B)とstateを POST で返却します。 - IdP は返却された
stateを保持値と照合し、照合成功時のみid_token(B)を検証します。 - 検証結果に応じて、IdP 側でログイン成立、登録完了、エラー処理等の後続処理を行います。
id_token について
リダイレクト版では、処理の前後で 2 種類の id_token を扱います。
id_token(A): IdP から PKaaS へ処理開始のために送信するトークンid_token(B): PKaaS から IdP へ FIDO 登録または認証結果として返却するトークン
それぞれ役割が異なるため、実装時には混同しないよう注意してください。
id_token(A)
id_token(A) は、IdP が PKaaS に送信する、処理開始に必要なトークンです。
登録時には、IdP 側で既存認証または本人確認を完了したうえで、その認証方式を authnCtx に設定してください。
nonce を必ずクレームとして含めてください。
PKaaS はこのトークンを検証して、FIDO 登録または認証処理を開始します。
id_token(B)
id_token(B) は、PKaaS が FIDO 登録または認証の結果として IdP に返却するトークンです。
IdP はこのトークンを検証し、検証成功後に後続処理へ進みます。
JWT の形式
id_token(A)、id_token(B) はいずれも JWT 形式の文字列です。
JWT は以下の 3 つの要素を . で連結した形式です。
- Header
- Payload
- Signature
生成の流れは以下の通りです。
- Header を JSON で作成する
- Payload を JSON で作成する
- Header と Payload をそれぞれ Base64URL エンコードする
Base64URL(header) + "." + Base64URL(payload)に対して署名を行うBase64URL(header) + "." + Base64URL(payload) + "." + Base64URL(signature)を JWT として扱う
クレーム
Payload の中身として、以下のクレームを扱います。
iss
トークン発行者を表します。
id_token(A)では IdPid_token(B)では PKaaS
aud
トークンの想定受信者を表します。
id_token(A)では PKaaSid_token(B)では IdP
sub
利用者を識別する値です。
sub には、IdP が利用者に対して一意かつ継続的に付与する識別子を設定してください。
メールアドレスなど、変更されうる値や個人情報を直接含む値は指定しないでください。例: user1234
iat
トークン発行時刻(UNIXTIME)です。未来の日時を示すなど時刻に整合性がない場合は検証に失敗します。
exp
トークン有効期限(UNIXTIME)です。exp を超えた id_token は検証に失敗します。
nonce
nonce は、ID Token が当該処理に対応して発行されたものであることを確認するための値です。
主に ID Token の再利用や差し替えを検知するために利用します。
nonce は必須です。
state は認証要求と返却の対応確認に使う値であり、nonce とは役割が異なります。
IdP 側で生成し、id_token(A) に必ず含めてください。
nonce は id_token(B) にも含まれます。IdP 側では、返却された id_token(B) の nonce が id_token(A) に含めた nonce と一致することを確認してください。
authnCtx
authnCtx は、IdP 側で利用者を確認する際に実施した認証方式を表す値です。
登録時は、事前に IdP 側で実施した認証方式を設定してください。
登録時の設定例: "password"
認証時(pur=auth)は、事前に IdP 側で認証を行わない構成も可能です。その場合は "authnCtx":"" としてください。
id_token(B) では、FIDO 認証に成功した場合は "fido" が設定されます。
実装上の注意
id_token(A)とid_token(B)は向きと役割が異なります。issとaudは送受信方向に応じて逆になります。stateとnonceは用途が異なります。stateは要求と返却の対応確認、nonceは ID Token の再利用や差し替え検知に用います。nonceは必須です。IdP 側で生成し、id_token(A)にクレームとして含めてください。nonceはid_token(B)にも含まれます。IdP 側では、返却されたid_token(B)のnonceがid_token(A)に含めたnonceと一致することを確認してください。- 登録時は、IdP 側で既存認証または本人確認が完了していることを前提に
id_token(A)を発行してください。 - 受信側は署名、
iss、aud、expなどを必ず検証してください。
リクエストパラメータ
PKaaS へ遷移する際は、以下のパラメータを HTML form 等により POST で送信してください。id_token(A) のパラメータ名は id_token とします。
| パラメータ | 説明 |
|---|---|
id_token |
id_token(A) を設定します。id_token(A) には nonce を必ずクレームとして含めてください。PKaaS はこのトークンを検証して FIDO 登録または認証処理を開始します。 |
src |
認証完了後の戻り先 URL を表す値です。src には、利用申請時に登録した利用ドメイン配下の HTTPS URL を指定してください。戻り先 URL を Base64 エンコードして設定してください。Base64 エンコード結果には = などの文字が含まれる場合があります。送信時に必要な場合は URL エンコードしてください。 |
pur |
利用目的を表す値です。reg: FIDO 登録、auth: FIDO 認証 |
state |
認証要求と認証結果を対応づけるための値です。IdP 側で生成し、短寿命 cookie 等に保持してください。 |
レスポンスパラメータ
PKaaS は、認証結果を含む HTML form を返し、ブラウザ上で auto-submit することで、src で指定された戻り先へ POST で返却します。
返却される主な値は以下の通りです。
| パラメータ | 説明 |
|---|---|
id_token |
id_token(B) を設定します。IdP 側で検証してください。 |
state |
認証要求時に IdP 側で生成した値です。IdP 側で保持していた値と一致することを確認してください。 |
セキュリティ要件
リダイレクト版では、callback パスで通常の CSRF 保護をそのまま適用できない場合があるため、state による相関確認を必須とします。
state は以下の条件を満たすよう実装してください。
- 暗号学的に安全な乱数生成器を用いて生成すること
- 推測困難な値とすること
- 十分な長さを持たせること
- 認証要求ごとに新規発行すること
- IdP 側で短寿命 cookie 等に保持すること
- callback 受信時に保持値と完全一致することを確認すること
- 照合後は破棄すること
また、IdP 側では返却された id_token(B) について、少なくとも以下を検証してください。
id_tokenの署名issaudexpnonce
callback URL には、認証レスポンス専用のパスを使用してください。
src には、利用申請時に登録した利用ドメイン配下の HTTPS URL を指定してください。
PKaaS は、id_token(A) の iss に紐づく登録済み利用ドメインと src の host を照合し、登録済み利用ドメイン配下ではない URL が指定された場合はエラーとしてください。ここでの照合は、iss の文字列からドメインを推測するのではなく、PKaaS 側の登録情報に基づいて行います。
関連エンドポイントは HTTPS で提供してください。
登録時・認証時の扱い
FIDO 登録時は、IdP 側で既存認証または本人確認が完了していることを前提とします。
FIDO 登録時、FIDO 認証時のいずれでも state を付与し、返却時に照合してください。
state の照合に成功した場合のみ、id_token の検証および後続処理へ進んでください。
導入手順
- 利用申請を行う
- Client ID、利用ドメインを登録する
- IdP 側で
stateの生成・保持・照合を実装する - IdP 側で
id_token(A)の発行とid_token(B)の検証を実装する - PKaaS との疎通確認を行う